第46章 【第四十一話】特別という祈り
アレンの身体が、僅かによろめく。
それでも、防護壁は消えなかった。
「どうして……っ! どうして消えないんだ……っ!」
「その壁は、暴走したイノセンスの出力を封じるための術式だ!」
コムイが、術式盤へ手を走らせながら叫ぶ。
「別のイノセンスで正面から攻撃しても、出力を分散させて受け流すように作られている!」
「でも……このままじゃ二人が……っ!」
アレンの声が、苦しげに掠れる。
「他に手はないんですか……っ!」
神田が、防護壁へ拳を叩きつけた。
「……クソがっ」
歯を食いしばり、壁の向こうのティファを睨む。
「六幻さえありゃ、こんな壁……っ」
叫び声も、警告音も。
全てを遮るように、ラビの声が耳元で響いた。
「もう一人で止めんなっ!!」
怒鳴る声が、震えている。
「オレまで勝手に置いてくなっ!!」
「でも……私……っ」
「自分刺して庇うのも……一人で全部抱えて壊れんのも……お前がずっとやってきた、それだろっ!」
抱き締める腕に、なお力が籠もる。
「その“自分が犠牲になりゃいい”ってやり方で……お前はずっと、自分ばっか削ってきたんだろうが……っ!」
ティファの胸が、引き裂かれるように痛んだ。
「怖ぇなら、怖ぇままでいろっ!」
ラビの声が崩れる。
「泣きたいなら泣け! お前が大事だって思ったもんまで、勝手に捨てんなっ!」
血に濡れた腕が、ティファを離すまいと強く抱き締める。
「お前がまた消えそうになんなら……オレが何度でも引き戻してやるから!!」
どくん。
どくん。
『ニルヴァーナ』が、激しく脈打つ。
頭の奥で、声が乱れる。
――手放して。
――お願い。
――ひとりだけを選んだら、あなたが壊れてしまう。
違う。
ティファは、血に濡れたラビの団服を掴んだ。
指先に、確かな温度がある。
傷口が痛い。
喉が焼ける。
怖い。
消えたくない。
ラビを失いたくない。
この人を愛しいと思う自分を、失いたくない。
皆と笑っていたい。
また、同じ場所へ帰りたい。