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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第45章 【第四十話】この世界に縫い止めるもの



「心があれば人なのか、って」

ティファの呼吸が止まった。



かつて交わした問い。

答えを持たないまま、それでも神田に向けて零した言葉。


「あれも……血が、言わせただけなら……」
「知るか、そんなもん」

ティファの瞳が揺れる。


「誰が言わせたかなんざ、知らねぇ。けど、俺に届いたのはお前の言葉だ。俺はそれを覚えてる」

吐き捨てるような声だった。


「それで十分だろ」

ティファの指先が、震えた。



「その心が、今削られてんだろ」

神田の目が、鋭く細まる。

「削って、生きてる顔だけ残す。そんなもん、救いじゃねぇ」


その言葉が、胸の奥を突いた瞬間。
薄れていくはずだった痛みが、確かに戻ってくる。


アレンの言葉で。
リナリーの優しさで。

神田の、不器用な怒りで。


怖い。
苦しい。

泣きたい。


アレンに心配を掛けたことが苦しい。

リナリーの言葉が、嬉しい。
神田がそこにいてくれることに、胸が熱くなる。


そして。

ラビを、失いたくない。



その感情を、自分から奪われたくない。


どくん――。

『ニルヴァーナ』が、脈打った。


今度の熱は、ひどく優しかった。



痛いのは、まだ手放せていないから。

失うものがなければ、二度と痛まない。



ティファの表情から、苦しみが薄れかける。


「……まただ」

ラビの声がした。

ティファが顔を上げる。
すぐ目の前に、ラビがいた。


その目が、痛いほど真っ直ぐだった。


「また、消そうとしてんだろ」

「……」

「アレンの言葉も。リナリーの言葉も。ユウの言葉も」

ラビの声が掠れる。


「お前が今、ちゃんと苦しいって思ったことまで……全部、無かったことにしようとしてんだろ」

ティファの瞳から、涙が落ちた。


図星だった。


苦しい。
怖い。

それなのに、また穏やかに微笑んでしまいそうだった。


「……ラビ……」
「消えんなよ」

縋りつくような響きだった。


「オレ、お前に……“皆を救える聖女”になってほしいわけじゃねぇ」


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