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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第45章 【第四十話】この世界に縫い止めるもの



誰か一人を求めるから、苦しくなる。


全てを等しく愛せばいい。

そうすれば、もう痛まない。



ティファの呼吸が、静かに整っていく。


流れていた涙が止まり、表情から苦しみが薄れていく。


「……まただ」

ラビの声がした。

ティファは、はっと顔を上げた。


ラビが、寝台のすぐ傍まで来ていた。
翠の瞳が、痛いほど真っ直ぐにこちらを見ている。


「今、お前、泣いてただろ」

「……」

「母親のこと聞いて、苦しくて……怖くて……ちゃんと泣いてた」

ラビの声が掠れる。


「なのに何で、もうそんな顔してんだよ」


ティファは、指先で自分の頬へ触れた。


そこには確かに、涙の痕が残っている。
けれど、さっきまであったはずの苦しみが遠い。


まるで、別の誰かの痛みのように。


「……分から、ない……」

喉が震える。

「私……何を……感じて、いたのか……」


リナリーが、小さく息を呑んだ。

アレンの拳が、強く握られる。



ルベリエは、何の感情も見せないまま言った。

「自然な経過だ。救済の器に、個人的な恐怖や執着は不要だ」


その瞬間。
ラビの顔から、完全に表情が消えた。

「……は?」

低い声。


これまで聞いたことのないほど、冷えた声だった。



ルベリエは、ティファの喉元を見ながら続ける。

「一人の人間に固執し、私情に左右される者に、万人を救う役目は果たせない」



一人の人間。


その言葉が、意識より先にラビの姿を浮かび上がらせた。



何度も笑ってくれた。
何度も手を伸ばしてくれた。


方舟で、必ず戻ってこいと告げてくれた。

目を覚ました時、泣きそうな顔で怒ってくれた。



触れてほしかった。
傍にいてほしかった。


本当は、あの時も遠ざけたくなどなかった。


それは。

本当に、自分の気持ちだったのだろうか。


セトラの血が、孤独な誰かへ寄り添おうとしただけではなかったのか。



ラビを特別だと思ったことさえ。

自分の心ではなく、苦しむ人を求める性質が作ったものだったのだとしたら。

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