• テキストサイズ

【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第45章 【第四十話】この世界に縫い止めるもの



「君はさっき、自分の意思とは関係なく歌った。目の前で、人の感情が変わっていくのを見た」


コムイの声は静かだった。

責めるためではなく、ティファ自身に確かめさせるための声だった。


「廊下にいた時の君は、それを怖がっていたはずだ」

ティファの呼吸が止まった。



確かに。

怖かった。


ラビの服を掴み、自分が何をしたのかと震えていた。

ファインダーたちの心を奪ってしまったのではないかと、涙が止まらなかった。



なのに。


今は、その恐怖へ手を伸ばしても届かない。



「……私……」

ティファは、自分の胸元へ手を当てた。

「怖かっ……た、はず……なのに……」


どくん。

再び、『ニルヴァーナ』が脈打つ。



怖がる必要はない。

恐怖は、誰も救わない。


自分が穏やかでいれば、皆も安心できる。



喉元から広がった熱が、胸の内側を優しく満たしていく。


乱れていた呼吸が、静かに整えられる。

溢れそうだった涙が、止まっていく。


その変化を見たジョニーが、計測器へ顔を寄せた。


「室長……!」

声が震えている。

「またです! ティファの恐怖反応が上昇した直後、急激に沈静化しています!」


リーバーの顔が険しくなる。


「外へ向いてた精神干渉が、本人へ戻ってきてやがるのか……?」

「自分の感情を……抑え込んでるってこと……?」

リナリーの声が、掠れた。



その言葉を聞いた瞬間、本来なら恐怖が押し寄せるはずだった。



自分の感情が、自分のものではなくなっていく。

自分の中の何かが、苦しみも悲しみも、不要なものとして取り除こうとしている。



それなのに。


その恐怖さえ、また静かに薄れていく。



ティファの口元に、淡い微笑みが浮かびかけた。


「……その顔、やめろよ」

低い声が、部屋の空気を切った。

ティファの胸が跳ねる。



ラビだった。

壁際から、一歩だけ前へ出ている。
包帯の巻かれた手が、強く握り締められていた。


「平気みてぇに笑うなよ」


/ 1148ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp