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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第44章 【第三十九話】優しい歌の檻



呼吸がうまくできない。


喉が痛い。
胸が苦しい。


それ以上に、目の前の光景が怖かった。


「わた、し……」

掠れた声が、途切れ途切れに漏れる。


「今……何、したの……」



ラビは、すぐには答えなかった。
肩へ置かれた手が、僅かに強くなる。


ティファ自身には、分かってしまっていた。


あれは、慰めではない。
支えでもない。


彼らの恐怖を、優しい歌で押し流した。

怖いと思う心まで、勝手に奪った。



そして――それを引いたのは、『ニルヴァーナ』じゃない。


私だ。


ティファの指先が、震えた。


助けたいと思った。
楽にしてあげたいと思った。


その優しさが、力を呼んだ。


暴走したんじゃない。

私が、暴走させたのだ。


「怖いって……思うこと、まで……」

喉が痛み、声が崩れる。

「消した……」


涙が、ぽろぽろと落ちる。


「私が……助けたいって、思ったから……」

その言葉を口にした瞬間、胸の奥が凍りついた。



誰かを救いたいと願うこと。

それ自体が、もう、罪になってしまう。


苦しむ人を見て、手を伸ばしたいと思う。


その、当たり前の優しさが。
人の心を奪う引き金になる。


なら、私は。

これから、誰かを助けたいと思うことすら、恐れなければならないのか。


「私……勝手に……皆の、気持ち……」

最後まで言葉にならなかった。



ラビは、何も言わなかった。

ただ、震えるティファを強く抱き締める。


逃げないように。
崩れてしまわないように。

その腕へ縋るように、ティファはラビの服を握った。


苦しい。

怖い。

それなのに、抱き締められた温度だけは、消えてほしくなかった。



廊下の奥から、ざわめきが広がり始める。


「何があった……?」
「今の歌……」

「ティファさんが……?」

騒ぎを聞きつけた団員たちが、次々と顔を覗かせた。

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