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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第44章 【第三十九話】優しい歌の檻



「……や……」


止めたい。

けれど、止まらない。



ティファの意思とは関係なく、旋律が静かな廊下へ広がっていく。



優しい歌だった。

幼い日、母が歌ってくれた旋律に、どこか似ていた。


あまりにも柔らかく、温かく、聞く者の心へ静かに染み込んでいく歌。




ファインダーたちの表情が変わった。


強張っていた肩から、力が抜ける。

震えていた指先が止まり、不安に揺れていた瞳がゆっくりと穏やかになっていく。


「……あ……」

一人が、ぼんやりと呟く。


「……平気、だ」

「怖く……ない……」



ティファの背筋が、凍りついた。


違う。


これは、彼らの不安に寄り添っているのではない。

怖くても進めるように、支えているのでもない。


消している。
恐怖そのものを。

痛みも、迷いも、全部。


優しい歌で、上から塗り潰すように。


「……っ、やめ……」

掠れた声が、僅かに漏れる。


けれど、歌は止まらない。

喉が焼けるように痛む。


それなのに、旋律だけはどんどん澄み渡っていく。



ファインダーたちは、歌の方へゆっくり顔を向けた。


その表情は、穏やかだった。

穏やかすぎた。


「ティファさん……」
「安心、する……」

「もう……何も怖くない……」


一人が、祈るように膝をついた。

続いて、もう一人も。


まるで、目の前に救いそのものを見つけたように。



違う。


違う。


こんなのは、望んでいない。


ティファの瞳から、涙が零れた。

「や……めて……」


止めてほしい。

誰かに。


自分では、もう止められない。

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