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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第44章 【第三十九話】優しい歌の檻


その時だった。

曲がり角の向こうから、押し殺した声が聞こえてきた。


「……次、また同じことが起きたら、もう無理なんじゃないか」

ティファの足が止まる。


声の主は、数人のファインダーたちだった。
皆、壁際に立ち、疲れ切った顔をしている。


「アレンだって、あんな状態で戻ってきたんだぞ」

「リナリーさんも……まともに立ててなかった」

「神田やクロウリーまで、あそこまで傷ついて……」

「ラビなんて、ティファさんを医療班に渡した途端に倒れたって……」


誰かが、声を落とした。

「そのティファさんも……まだ声が、戻らないんだろ」




沈黙が、一段深くなる。



誰かが、掠れた声で続けた。

「次は、本部ごと潰されるかもしれない」



沈黙が落ちた。



誰も否定しない。

否定できないのだ。



恐怖を飲み込むように俯く彼らの姿を見て、ティファの胸の奥へ冷たいものが入り込んだ。



怖いのだ。
皆、怯えている。


当たり前だ。

あれだけのことがあったのだから。


ティファの指先が、無意識に喉元へ触れた。


『ニルヴァーナ』。

包帯はもう薄いものへ替わっている。
けれど、その下で、いつもよりはっきりと熱が脈打っていた。


(……落ち着かせないと)

ごく自然に、そう思った。



苦しんでいる人がいるなら、手を差し伸べたい。

怯えている人がいるなら、少しでも安らいでほしい。


今まで、ずっとそうしてきた。


魂を送り。
涙を受け止め。

立ち上がれない者へ、歌を届けてきた。



けれど。



――救いを求める者は際限なく彼女たちを求めた。


ヴェインの声が、冷たく蘇る。


――祈りはいつしか、彼女たち自身の輪郭を薄めていった。



ティファの呼吸が止まった。



(……私は)

本当に、救っていたのだろうか。

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