第44章 【第三十九話】優しい歌の檻
数日後。
本部内は、少しずつ日常を取り戻し始めていた。
けれど、その“普通”は、どこか脆かった。
エクソシストたちは未だ療養中で、科学班も医療班も休みなく動き続けている。
廊下ですれ違うファインダーたちの表情にも、隠しきれない疲労と不安が滲んでいた。
夜。
ティファは一人、医療棟の廊下を歩いていた。
本当は、外出の許可など出ていない。
喉の傷も完全には癒えておらず、長く歩けば身体はすぐに重くなる。
それでも、眠れなかった。
ラビが部屋を出て行った時の、僅かに強張った笑みが、何度も頭に浮かぶ。
それから、ヴェインの声も。
考えないようにするほど、胸の奥に絡みついて離れなかった。
静かな廊下。
壁に掛けられたランプの灯りだけが、石壁へ淡く揺れていた。