第44章 【第三十九話】優しい歌の檻
ティファの瞳が揺れる。
ラビは立ち上がる。
扉へ向かいかけて、少しだけ足を止めた。
「……無理して笑わなくていーから」
振り返らないまま、低く言う。
「オレは、ま、いったん退散するけどさ」
軽い言い方だった。
「でも、一人で勝手に消えんなよ」
ティファの呼吸が止まった。
ラビはそれ以上何も言わず、静かに部屋を出て行った。
扉が閉まる。
静養室に、静けさが戻る。
ティファはベッドの上で、シーツを握り締めたまま動けなかった。
胸の奥が痛い。
ラビを避けたかったわけじゃない。
むしろ、傍にいてほしかった。
手を取ってほしかった。
それなのに、自分から遠ざけた。
喉元が、微かに熱を持つ。
ティファは震える指で、包帯の上へ触れた。
どくん。
小さな鼓動。
『ニルヴァーナ』が、内側から脈打つ。
その熱が、まるで自分の迷いを見透かしているようで。
ティファは、逃げるように目を閉じた。