第44章 【第三十九話】優しい歌の檻
なのに。
ふと、ティファの指先が喉元へ触れた。
包帯の下。
『ニルヴァーナ』が宿る場所。
ほんの僅かに、熱を感じた気がした。
――救いを求める者は際限なく彼女たちを求めた。
方舟で聞いたヴェインの声が、耳の奥へ蘇る。
――壊れずにいられるといいね。
ティファの指が、包帯の上で止まった。
「……ティファ?」
ラビの声で、はっとする。
顔を上げると、彼がこちらを見ていた。
先ほどまでの軽い笑顔は残っている。
けれど、その瞳は、ティファの表情を確かめるように静かだった。
ティファは咄嗟に、何でもないというように小さく首を横へ振った。
ラビは、すぐには何も言わなかった。
やがて、いつも通りの調子で口元を上げる。
「ま、今日は難しいこと考えんの禁止な。病人は病人らしく、オレらのくだらねぇ話聞いて笑っとけばいいさ」
ティファは、少しだけ目を細めた。
笑おうとする。
今度は、さっきより自然に笑えた。
けれど、胸の奥に残った小さな棘だけは、消えてくれなかった。