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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第44章 【第三十九話】優しい歌の檻



「ま、オレ達もようやく動けるようになったし? 今日は面白い話、山ほど持ってきたさ」


リナリーが少し眉を上げる。

「面白い話って?」


「ユウが昨日、勝手に鍛錬場行こうとして、婦長に見つかった話」

ティファの目が僅かに丸くなる。


「ラビ!」

リナリーが呆れた声を出した。


「ホントだって。な、アレン」

急に振られたアレンが、困ったように笑う。


「……まあ、廊下で止められていたのは見ましたけど」

「ほらな」

「でも、耳を引っ張られていたのはラビも同じですよね」
「そこまで言う必要、ねぇさ!?」

ティファの肩が、小さく揺れた。


声は出ない。
それでも、確かに笑った。


ラビの口元が、僅かに緩む。

その変化はほんの一瞬で、すぐにいつもの軽い笑顔へ戻ってしまった。


けれどティファには、見えた気がした。


ずっと息を詰めていた人が、ようやく呼吸を取り戻したような顔だった。


ラビは頬杖をつき、ティファを覗き込む。

「……で?」

軽い声。

「声、戻るまでどれくらいかかりそうなん?」


ティファの睫毛が、僅かに揺れた。


リナリーが困ったように眉を下げる。

「ラビ、そんな聞き方……」
「だって気になるだろー?」

ラビは笑ったままだった。


けれど、ティファの喉元を見ていた目だけは、少しも笑っていない。



ティファは膝の上に置いていた小さなメモ帳を取り、ペンを走らせた。


『まだ少しかかるみたい』

書き終えて差し出す。


ラビは、その文字を黙って見た。
一瞬だけ、口元の笑みが薄くなる。

けれど、すぐに肩を竦めた。


「そっか。じゃあ今のうちに、静かなティファ堪能しとくさ」

アレンが思わず吹き出す。


「それ、本人の前で言うことじゃないでしょ」
「今しか言えねぇじゃん。喋れるようになったら反撃されるし」

リナリーも、堪えきれないようにくすりと笑った。


ティファは呆れたようにラビを見る。

けれど、自分でも分かるほど、その視線は柔らかかった。



ラビがここにいる。

アレンも、リナリーも。


皆、生きて、同じ部屋で笑っている。


そのことが、まだどこか信じられないほど嬉しかった。

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