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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第43章 【第三十八話】呼べなかった名前



「ティファ……」

リナリーの表情が、ふっと緩む。

その目には、すぐに涙が滲んだ。


婦長は二人を見るなり、露骨に眉を寄せた。


「ここは、重傷患者が増える部屋でしたかしら」
「す、すみません……!」

ミランダが即座に縮こまる。


リナリーも申し訳なさそうに頭を下げた。

「少しだけ。顔を見たら、すぐ戻るから」


婦長は、じっと二人を見つめた。


リナリーの足元。
ミランダの疲れ切った顔。

それから、ベッドの上で必死に二人を見ようとしているティファ。


やがて、深い溜息をひとつ吐く。


「五分よ」
「ありがとう」

リナリーが、小さく笑った。



二人は静かにベッドの傍へ歩み寄る。


ティファは、ゆっくりと視線を向けた。


その瞬間。
リナリーの表情が、堪えきれないように崩れた。


「……よかった」

小さな声だった。

「本当に……帰ってきてくれて、よかった」


ティファは、何か返そうとする。
けれど、リナリーはすぐに優しく首を横へ振った。


「喋っちゃ駄目」

その声音には、いつもより少しだけ姉のような響きがあった。


「今は、何も言わなくていいから。ちゃんと休んで」

ミランダも目を潤ませながら、何度も頷く。


「ティファちゃん……すごく、すごく心配したのよぉ……」

泣きそうな声が、小さく刺さる。


申し訳ない。

心配を掛けた。


そう伝えたいのに、今は目を伏せることしかできない。


リナリーは、そんなティファの表情を見て、少し困ったように微笑んだ。


「……皆、生きてるよ」

ティファの瞳が、僅かに見開かれる。


「アレンくんも、神田も、クロウリーも、チャオジーも。クロウリーはまだ眠ってるけど、ちゃんと戻ってきた」

詰まっていた息が、少しだけほどけた。

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