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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第43章 【第三十八話】呼べなかった名前


ティファはわずかに視線を動かす。


婦長はベッド脇へ歩み寄り、喉元に巻かれた包帯を慎重に確認した。


包帯に触れられた瞬間、鋭い痛みが走る。
ティファの指先が、僅かに震えた。


婦長の眉が深く寄る。


「……無茶をしたわね」

叱るような口調。


けれど、包帯へ触れる手つきだけは、驚くほど丁寧だった。


ティファは小さく目を伏せる。


返事をしたくても、声が出ない。


その様子を見て、婦長は小さく息を吐いた。


「返事は不要よ」

ぴしゃりと言う。

「今のあなたは、生きてここへ戻ってきただけで合格なんだから」


ティファの瞳が、僅かに揺れた。



生きて戻ってきた。


その言葉に、胸の奥へ沈んでいたものが、ようやく僅かにほどけた気がした。


ラビ。

アレン。

リナリー。

神田。

クロウリー。

チャオジー。


皆は、どうなったのだろう。



あの時、ラビは自分の傍にいた。

掠れた声で、怒っていた。


その顔を思い出した瞬間、目の奥が急に熱くなる。


ティファは何かを尋ねようとして、反射的に唇を開いた。

「……っ」


けれど、声の代わりに焼けるような痛みが喉を貫く。


ティファは、苦しげに眉を寄せた。


伝えたい。

皆が無事なのか、知りたい。


けれど、瞼はもう限界だった。

疲労が、意識を底へ引きずり込んでいく。


問いを抱えたまま、ティファは眠りへ落ちた。




目を覚ましては、眠る。


それを何度か繰り返し、二日が過ぎた頃。

ようやく、熱が引き始めた。




その日の午後だった。


控えめなノック音が響く。


「……入るわよ」

遠慮がちな声。


扉の隙間から顔を覗かせたのは、リナリーだった。


まだ顔色は悪く、立っているだけでも少し辛そうに見える。

その後ろから、ミランダもおずおずと顔を覗かせていた。

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