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【Dグレ】Twin Ray -灰の世界に響く歌-

第43章 【第三十八話】呼べなかった名前



静かに。
だが、はっきりと告げる。


「タイムレコードを解いて」

空気が張り詰めた。


ミランダは一瞬だけ震えたあと、ゆっくり頷く。


「……はい」

小さく応じる。


次の瞬間。
止められていた時間が、ほどけた。


「――っ!」

押し留められていた現実が、一気に戻る。


アレンの身体が大きく揺れた。
リナリーが苦痛に眉を寄せ、コムイの腕へ縋る。

神田の足が僅かに沈む。

クロウリーの傷から再び血が滲み、医療班が慌ただしく駆け寄る。


ティファも、例外ではなかった。


意識のない身体の、そこかしこで傷が開く。
白い喉元にも、薄く赤が滲んだ。


そして。

彼女を抱えていたラビの身体も、ぐらりと傾いた。


「……っ!」

喉の奥で、短く息が詰まる。


ジャスデビとの戦い。ロードとの戦い。ティキとの戦い。崩壊の中で受けた傷。
堰き止められていた痛みが、容赦なく身体へ戻ってきた。


視界が一瞬、白く霞んだ。

膝が崩れる。


それでも。

腕の中のティファだけは、落とさなかった。


反射的に身体を丸め、衝撃が彼女へ伝わらないように抱え込む。

片膝が、床へ強く落ちた。


「ラビ!」

ジョニーの声が響く。

「ラビ、ティファを……!」


ラビは返事をしなかった。


できなかった。


戻ってきた痛みで息もまともに吸えない。腕は痺れ、今にも力が抜けそうになる。

それでも、ティファを抱く腕だけは緩めなかった。



落とせない。

もう二度と。


腕の中で、ティファの眉が苦しげに寄る。
浅い呼吸が、掠れるように漏れた。


「……っ」

ラビの顔色が変わった。


「悪ぃ……」

声が震える。

「悪ぃ、ティファ……揺らしたな」


痛みに耐えながら、抱く位置を僅かに変えた。

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