第5章 旨いバランス
それから一晩。
俺は高専内の探せる場所は全部探した。
でも、を見つけることはできなかった。
これだけ探してもいないんだからもしかしたら部屋に戻ってるのかもとか一縷の望みにかけて部屋に戻ったけど、やっぱりはいなかった。
もうどうしたらいいかわからなくて俺はベッドに倒れ込んだ。
、どこに行ったんだろう…
戻って…くるかな…?
徹夜で探し回ってたからか、ベッドに残るの匂いに誘われて睡魔が寄ってくる。
夢うつつで部屋のドアが開いて、が帰って来る。
そうであったらいいのに…
パタンと閉まるドアの音にそれが現実であることに気づいて飛び起きた。
「!?」
寝てると思ってた俺がいきなり跳ね起きたもんだからはビクリと目を見開いたけど、すぐにそれもスッと細められた。
泣き腫らした目元が痛々しい。
は俺に何も言うことなくシャワールームに入っていった。
が浴びるシャワーの水音を聞きながら俺はひどく安心した。
よかった…帰ってきてくれた……よかった…
無視されたっていい。
笑ってくれなくたっていい。
ただ、の帰ってこれる場所でいられるならそれだけでいい。
なのに。
シャワールームから出てきたは着替えを済ませると、いつも持ち歩いているバッグを掴んでまた部屋を出ていこうとする。
「、どこ行くんだ?」
まだ朝飯の時間には早いし、講習の教室だって誰もいない。
「…別に、どこだっていいだろ」
こっちを見もしないでそう言って出ていった。
無情に閉まるドアの音に胸が軋んだ。