第5章 旨いバランス
は日付が変わって少しした頃に戻ってきた。
出ていった時の荒々しさはもうなかった。
黙ってシャワーを浴びて、そのままベッドに横になった。
ちゃんと戻ってきてくれたことに安心して俺もシャワーを浴びた。
何となく一緒にベッドで寝るのは憚れて、ソファで寝る。
そこから三日間、は口をきいてくれなかった。
それでも、“連れ”としての役割は有効らしくて一緒には行動してくれた。
部屋を出る時は準備して俺のことを待っててくれるし、俺もの様子を見て、飯とかトイレとかについてってた。
すごく意外だったんだけど、話さなくて気まずさはあるけど一緒にいるのは全く苦痛じゃなかった。
ただ、一日に何回もしていたキスもなくなって、の飲み物に入れるガムシロップの量がめちゃくちゃ増えたのと食べるお菓子の量がヤバかった。
マジで病気になるんじゃないかって思うくらい甘い物を取っていた。
で、三日目に倒れた。
俺は慌てて家入さんのところに担ぎ込んだ。
前に聞いてた甘い物食べ過ぎでの低血糖、らしい。
三日間で取った食べ物を聞き取られて、「隣で見てたなら止めな」ってちょっと怒られた。
でも、特に医務室に泊まらなきゃいけないとかそういうのではないみたいでその日のうちに帰された。
「…ごめん。俺、止めなくて…」
部屋についてから声をかけた。
三日ぶり。
「…甘井のせいじゃないじゃん」
も返してくれた。
これも三日ぶり。
「でも、元はと言えば俺のせいかな、って…」
「それは、まぁ…」
あ、そこは否定しないのね。
でも、もう一週間以上も俺のをあげれてない。
あんなに気に入ってたものをそんなにあげれてないんだ。
「だから、ごめん…」
は立ったまま俺を見てる。
責めるでもない。
でも、許すでもない。
「ごめんって言うならさ…」
俺の目を見つめたまま、距離を詰めてくる。
そのまま俺の胸倉を掴んで、右足で俺の足を払った。
ちょうど柔道の大外刈りみたいに。
俺はその場に尻もちをついて、未だに掴まれている胸倉で持ち上げられてを見上げる形になった。
の顔は影になって表情がよく見えない。
ただ声だけが降ってくる。
「ごめんって言うなら甘井の、ちょうだいよ」
その言葉の後すぐに唇が降ってきた。