第5章 旨いバランス
日下部さんは大きな舌打ちをして、
「ったく、面倒くせぇったらありゃしねーな」
と、頭をガシガシ掻きながら本当に面倒くさそうに言った。
うん、自分でもそう思う。
「すみません…」
「謝んなよ、てめぇで決めたことだろ」
「…はい」
「あー、つーか、今更なんだが…」
日下部さんは何だか気まずそうにすると、
「お前、アイツに惚れてんの?」
一瞬で顔が、いや耳とか首まで全部が火を吹いたように熱くなった。
「え!なっ…ほ!?」
そんな俺の顔を日下部さんは「うわ〜」みたいな目で見てる。
「すまん。もういいわ」
違う違う!
勝手に何かを察しないで!
「っ!違いますって!成り行き上、ただ放っとけないってだけで!そりゃ、かなり可愛いし、懐かれてるのも悪い気しないけど!口悪いし、態度悪いし!なのに、所々で育ちの良さとか出てるけど!ムリなお願いばっか言うし!それがまた可愛くて断れないけど!」
ん?
あれ?
俺、結局何を言いたいんだ?
「…お前、どんどん墓穴掘ってるからな?」
「…っ!」
「まぁ、お前の気持ちはわかった」
さらに顔面が熱くなって、それ以上熱くなるなと俺は額に拳を当てて気を落ち着かせる。
その間に日下部さんは懐から手帳を出して、サラサラっと何かを書くとページを破って俺に差し出してきた。
「俺のケー番。なんかあったら連絡しろ」
しょうがねーなって顔してるけど、眼光の鋭さはもうない。
「ただし、俺にもプライベートはある。すぐ繋がるとは限らねぇからな?助けるのが遅くなったからって恨むなよ?」
「ぁ、ありがとうございます…」
何だかんだで日下部さんって優しいんだ。
マジ、一生ついていきたい…
「無理だけはすんなよ。ヤベーと思ったらすぐ離脱。お前だって死にたくねぇだろ?」
「はい」
俺の返事に少しだけ表情を緩めると日下部さんは立ち上がった。
「んじゃ、教室も心配だしそろそろ戻るか」
「あの…俺、もう少しここにいてもいいですか?ちょっと情報が多すぎて…頭の中整理したくて…」
「あぁ、いくらでも整理してろ。それでやっぱやめたってなったらそのまま戻ってこなくてもいいぞ?」
「それはないです」
「そりゃ、ご立派なこった」
ハハッと今度は声を立てて笑われた。
「話くらいは聞くから、あんま抱えんなよ?」
「…ありがとうございます」
