第5章 旨いバランス
「…そんなことやる…動機っていうか…そういうのもないんじゃ…?」
それはわからない。
そう言って欲しかった。
なのに、日下部さんはまるでその質問すら想定していたように迷わず指を動かす。
書類をめくる。
やめてくれ。
そんなの知りたくない。
なのに、日下部さんがめくった書類に視線が持っていかれる。
「狐塚は幼い頃から虐待を受けていた可能性がある」
そんな無感情な日下部さんの声が逆に真実味があった。
内臓が鷲掴みされたように苦しくなる。
書類には何枚も写真が載っている。
写っているのは何かのノート。
一枚目に写っているページには『は七歳になっても何も術式を出現させない。これからは畑として教育していく』と始まる日記のような文章。
は死滅回游で覚醒した泳者。
小さい時は術式はなかったみたいだけど…畑って何だ?
次の写真のノートには写真が貼られている。
小学生くらいの女の子が泣いてる。
だ。
幼いけど今のの面影がかなりある。
左の頬が赤い。
『が男根を握るのを嫌がるので仕置きをする。学校があるので今後は見えるところへの仕置きはしないように気をつけること』
三枚目の写真の中にもの写真がある。
チョコレートを手に幼いが嬉しそうに微笑んでいる。
ただ、顔や髪に白い何かがついてる。
『今日は手淫で射精まで持っていけるようになった。ご褒美にチョコレートを与える。は甘い物が好きなのでそれで釣れば成長が早い。今後もその方向で教育していく』
四枚目。
誰かに後頭部を掴まれて何かに顔を押し当てられてる。
の顔は見えないけど、背中に赤い痕が何本も見てる。
『口淫を嫌がるので背中を何回か鞭打つ。それでも何度も口から出そうとするので押さえつけるのに苦労した。口淫はまだまだ教育が必要そうだ』
急に吐き気に襲われた。
口に手を当てて堪える。
嫌だ。
もう見たくない。
知りたくない。
でも…を知りたい。
五枚目。
これには写真がない。
『がようやく初潮を迎えた。今後は畑として務めを果たしてもらう』
待てよ。
畑って…それって…
奥歯が震えてカチカチと音が鳴りそうで唇を噛む。
口の中には鉄の味が広がった。