第5章 旨いバランス
は絡ませていた腕も手も外して、ゆっくり顔を上げて俺の顔を見る。
怒ってはいないみたいだけど、睨むみたいにすごく目力が強い。
反射的にウッと息が詰まりそうになった。
はヒュッと息を吸うと、
「なんで甘井にそんなこと言われなきゃなんないの?」
「アイツらがアタシに手を出してくるから」
「やられる前にやってるだけだし」
「アタシはアタシを守るために術式使ってるだけだし」
「甘井が日下部とか、他のヤツを守りたいんならアタシに近づけんな。お前がそっち守れよ」
吸った分以上の言葉がマシンガンのように飛び出してくる。
うっ…俺の言いたいこと、伝わんなかった…?
もしかして、地雷踏んだ…?
マシンガンが一度止んで、また弾丸を装填したら撃ってくる。
と、思ってた。
けど。
「…甘井は、何のためにアタシといんの…?」
マシンガンみたいに手数はないのに、威力はロケットランチャー並みの一言だった。
…そうだよな。
まだ一緒にいるようになって三日しか経ってない。
たぶん、はまだ俺を信用しきってない。
日下部さんっていう高専側が介入してきて、さらにそうなったのかもしれない。
ちゃんと言わなきゃ。
言うんだ、俺。
「…俺はの壁になるために一緒にいる」
本当は「守る」って言ってやれればよかったんだろうけど、気恥ずかしくて言えなかった。
本当、意気地がない…。
この言葉では納得してくれるだろうか?
恐る恐るを見る。
目が合うと「あっそ」って言ってふいっと目を逸らされた。
ただ、口元が少しだけ、ほんの少しだけ上がっているように見えた。
「お前の言葉なんて信用できないけどな」
そう言いつつもまた俺の肩に頭を預けて、腕を絡めてくる。
「アタシ、変わる気ないから」
「え?」
「これからもアタシはアタシを守るために術式使うから」
さっきと言ってることは一緒なのに、声はどこか穏やかだ。
「…わかった。はそれでいいよ、今は」
「今はってなんだよ?」
「時間が経てば変わるかもしんないだろ?」
「変わんねーし」
「ばぁちゃんになっても?」
「ばぁちゃんになんねーし」
「いや、なるだろ」
俺の腕に頭をグリグリ押し当ててくる。
これはデレと呼んでいいんじゃないか?と思う。