第5章 旨いバランス
「お前ら、ちょっと面貸せ」
そう言われて連れて行かれたのは人気の無い校舎裏。
俺は今から何言われんのかドギマギしてるっていうのに、はツーンと面白くなさそうな顔してる。
からしてみればご褒美のお預け食らってる状況だからこれは仕方ない…かも。
「先生さー、ボク達早く帰りたいんだけどー」
口調こそ変わってないが美少年スマイルをやめたはかなり素に近い。
「ったく、俺だってさっさと帰りてぇよ」
日下部さんはそうボヤくと、後頭部をボリボリと掻いた。
「一応言っとくが、俺は面倒事はゴメンなんだよ。出来れば関わりたくない。だけどよぉ、身内が面倒事に巻き込まれんのを黙って見てらんねぇんだわ」
日下部さんとはほとんど会話らしい会話をしたことがない。
でも…そんな俺を「身内」って…
なんか…ちょっと、いや、かなり…感激…
「面倒事ってさー、ボク達、ただ仲良くしてるだけじゃん」
「ただ仲良くしてるだけならな…お前、高専ナメてるだろ?その気になりゃ参加者の情報なんてすぐ調べがつくんだよ。年齢、性別、経歴、場合によっちゃ術式も、な」
当たり前っちゃ当たり前か。
講習会前に基本的な情報は申込書に書いてるし、そこから経歴辿るのなんてワケないんだろうな。
ってことは日下部さんはが成人女性ってことは知ってるのか…
「へぇ、じゃあ先生の前ではショタやんなくていいってこと?」
「あぁ。つーか、俺の前じゃなくたってしなくていいだろ」
「需要があんだよ」
は舌を出して悪態をつく。
「まぁ、そんなのは好きにしろ。ただし、こいつに近づくのはやめろ。こいつはこっち側なんだよ」
しかし、日下部さん、さすが大人だ。
そんなの態度にも乗せられてない。
俺もああいうオトナになりたい。
「こっちとかそっちとかワケ分かんねー。別にアタシが強制してるわけじゃねーし。こいつが自分の意志でアタシと一緒にいんだよ」
「どうだかな。どうせ脅してるか、術式で操ってるかしてるんだろ?」
…あ、ヤバい。
から出てる雰囲気が明らかに変わっていくのがわかる。
たぶんだけど、は自分自身を勝手に決めつけられるのが嫌いなんだ。
このままじゃヤバい方向に行きそう。
そんな予感だけがビシバシ伝わってくる。