第4章 塩辛い過去
よく撮れそうな画角を探して、スマホをセットしてから甘井の横で上だけ服を脱ぐ。
私の身体は豊満な方じゃないから甘井の趣味かどうかはわからないけど、そんなのは関係ない。
術式をかけちゃえば、関係ない。
「“甘井”、ハメ撮りしよっかー。“中に出すまで止めないで”」
甘井の耳に入った途端、その言葉を理解した途端、甘井は私を押し倒した。
大丈夫、甘井は他のヤツと違う。
大丈夫、アイツらとは違う。
わかってる。
わかってるのに…
伸し掛かられて逃げられない。
無理矢理押し入ってくる感覚。
自分勝手にナカを動き回る。
わかってる。
これは、私がやらせてることだ。
でも、骨の髄が覚えてる恐怖が身体を震わせる。
心に閉じ込めた幼い私が「イヤだ」「やめて」と甘井を押し返す。
甘井は術式の中で私のことなど見えても聞こえてもいない。
私は終わるまで耐えるしかない。
あの頃と一緒。
私は口を両手で覆って、耐える。
あの頃と一緒。
でも。
ぽたり。
ぽたり。
上から何か降ってきた。
ギュッと閉じていた目を開いて上を見ると、甘井の目から垂れてきてた。
「泣いてんの?」
なんで?
そんなに私とヤりたくなかった?
術式で勝手に操られてるのが悔しい?
ブツブツ何か呟いている言葉に耳を傾けてもよく聞こえない。
なのに、かろうじて聞こえたのは
「自分のこと、大切にしろよ…」
は?
私に言ってるの?
どういう意味?
何、コイツ?
私の頭が真っ白になっている間に甘井は目的を達して、私の上に倒れ込んできた。
甘井のモノが私から出ていってもずっと動かない。
早く退けと肩を押しても反応がない。
ヤッた後だからだと思っていた浅く早い呼吸が収まってない。
顔色が悪い。
身体が微かに震えている。
頭に「体内の糖分を増幅させ、何らかの形で出力する術式」という言葉が過ぎる。
コイツ、低血糖起こしてる!?
私もよく甘い物を食べ過ぎてそんな症状を起こすけど、それよりも症状は重そうに見える。
クソッ、私の上で脱力しやがって。
重くて這い出すのも一苦労だ。
私は自分のバッグを漁っておやつストックからラムネを取り出した。
「“甘井”、“口開けて”」
開いた口にラムネを放り込む。
その後も何個かやってたらまた泣きそうになってる。
女とヤッても泣く。
ラムネ食べても泣く。
ワケわかんない。
