第1章 甘い受難
「ボク、何歳なの?」
少年に群がるお姉様方の一人がそう尋ねる。
「“ボク”、何歳に見える?」
少年はニコニコ人懐こく笑いながら返す。
「んー、12、3歳かな?」
「うん、正解!」
何故か一種の歓声がお姉様方から上がった。
「そんなに若くてよくあの地獄から生還したね」
気の毒そうにお姉様。
「怖くてあまり動き回らなかったから…」
恐怖に身震いするように俯く少年。
「それが正解よ!ボクみたいな可愛い子が死んでしまう方が世界の損失よ!」
何故か力説するお姉様。
「えへへ、ありがとー」
照れたように笑う少年。
近くにいるお姉様方がどういう風に見えているかはわからないが、遠くから見るぶんにはかなり胡散臭いんだが…。
それには誰も気付いていないみたいだ。
俺の危険人物レーダーが優秀すぎるのか…?
「ボクはどうしてそんな格好をしてるの?若いのにたくさんピアスも開いてるし」
「“ボク”、親の趣味でこういうファッション誌のモデルやってたんだ。すっごくマイナー雑誌だから、この騒ぎでもう廃刊になってるかもだけど」
「えー、見てみたかったー!」
お姉様方がキャイキャイ言っていると、部屋の前の方のドアがガラリと開いて、日下部さんが入ってきた。
「今日からここのクラスの講習を担当する者だ。よろしく」
気怠げに挨拶する様子は普段の日下部さんを知っていれば何とも思わないけど、初見でこれだとかなり取っ付きにくそうって思うだろうな。
なのに、少年が手を挙げた。
「先生ー、名前は?」
フレンドリーな声色で話すが、日下部さんは何故だかゲッて顔をして、聞こえないくらい小さく舌打ちすると、
「名乗るワケねーだろ。この部屋担当は俺一人だからただ『先生』だけで通じる」
と迷惑そうに答えた。
てか、講師側も名乗らないんだ。
結構徹底してる。
しかし、皆が知らない高専の事情を少しとはいえ俺だけが知っているのは若干の優越感があった。
そこからは学校の新学期によくある自己紹介なんてものはもちろんなく、いきなり講習が始まる。
呪いとは何たるかから始まり、呪術界の歴史やら呪術規定やら小難しい話が続く。
他の奴らがどんな感じで話を聞いているのか気になって、目だけで周りを見渡す。
少年が目に入った。
つまらなそうに頬杖をついていた。
その後は睡魔との戦いに追われて午前中は終わった。
