第1章 甘い受難
新宿決戦から3ヶ月が経過して、死滅回游泳者で生き残っている者は二つに分けられた。
一つは過去の術師の受肉体。
これは虎杖と来栖さんで元の人間に戻す作戦が行われていた。
で、もう一つが俺みたいな術式が開花したタイプの現代の術師。
こっちは一度花開いたものを摘み取ることもできないようで、これからこの能力と一緒に生きていくしかないらしい。
だから一度高専に集められて3ヶ月の講習を受ける。
その後は術式の登録をやってから、一般人として生きるのか、それとも高専の関係者として働くのか、本人の意思に基づき決定する…らしい。
俺としてはもう既に家入さんのところで手伝いさせてもらってるから今更感があったけど、やっておいて損もないからと講習に参加することになった。
講習会場は何部屋もあって、全国規模で行われた死滅回游の泳者の多さ、そして意外にも生存者も多いことを知った。
しかし、皆それなりに苦労はしているらしく、初対面でも謎の連帯感があった。
けど、俺はどちらかと言うとそういうのはちょっとパス。
また、誰かの顔色とかその場の雰囲気とかの読み合いになるのは今はちょっと出来そうにない。
それに、少し不思議なんだが、3カ月間講習中は名前を名乗らないことになっている。
皆、胸に番号札を付けて、番号で呼び合うことになっているから何となく声もかけづらい。
何それ、囚人みたい。とも思ったけど、日車さんに訊いてみたら、「個人情報保護の観点から」らしい。
よくわからないけど、横の繋がりを作りたくないってことかな?とか勝手に邪推してみたりする。
しかし、人が集まれば自然とヒエラルキーみたいなものが形成されていくのはどこの世でも同じようで、1日目だというのにここの部屋でも目立つ奴が人集りの中心にいる。
そういう奴は大抵見た目が良いことが多いんだけど、ここの部屋もそれは例外ではなく皆に持て囃されているのは恐ろしい程に顔の整った少年だった。
周りにはお姉様方が群がって、やいのやいのと可愛がられている様子の少年は、耳にも口にも数個ずつピアスがついていて、オーバーサイズの服を纏っている。
何歳かなんて知らないけど、あの年であんだけの格好をしているんだからそれだけでワケアリそうだと俺の今までの人生で培った危険人物レーダーにひっかかるもんだから、俺は近づかずに遠くの方から様子を伺うだけにしていた。
