第2章 酸っぱい執着
「なんで別棟のトイレにいるってわかったんだ?」
の手を引き、自分の部屋に向かう道すがら尋ねてみた。
確かに教室を出る時、はお姉様方に囲まれてすぐには出てこれない状況だったはずだ。
それに俺は全力疾走で別棟まで行ったから、それをが知る由はない、と思う。
明日以降の参考のためにはぜひ聞いておきたかった。
が、
「ニオイ」
「え?」
「甘井のニオイを追ってきた」
「は?」
「甘井は甘いニオイがするからどこにいるかわかりやすい」
聞けば聞くほど理解が出来ない。
そんな警察犬みたいな芸当が人間に出来んのか?
だって、犬って人間の何万倍もの嗅覚だっていうのに、はそんな感覚を持っているのか、かなり疑問だ。
「…俺、そんなに臭う?」
「かなり匂う」
今まで誰にもそんなこと言われたことがなかった。
皆、俺に気を使って言わないでおいてくれたんだろうか?
でも、家入さん辺りだったらサラッと言ってくれそうなもんだけとな。
それにしても、今まで甘ったるい体臭を垂れ流していたと思うとかなり凹む。
明日からは体臭対策もしなきゃいけないのか…。
そんなことを考えている間に自室についた。
俺の部屋は高専敷地内にある寮の一室。
幸か不幸か、部屋につくまで誰とも会わずに済んだ。
ここまで来て誰かに見られのもめんどくさいから、部屋にはさっさと入ってもらう。
は入口で俺の部屋を見渡して、
「結構何もないね」
「まぁ、借りてる部屋だし」
「ふーん」
そう言うとはドアの鍵をガチャリと掛けた。
「え?」
驚いて振り返るとの顔は笑っていた。
ただし、目は昼に一瞬だけ見せた肉食動物のようで、やけに光を反射させてギラリと光った。
「“甘井”、そんなところに立ってないでソファにでも“座って”よ」
まるでの家のように座ることを勧められれば、身体は勝手にソファに身を沈める。
はソファの前に立ち、俺を見下ろしている。
そんな状況で見る美少年の顔はかなり凄みがある。
「“甘井”、お前の術式、何?“教えて”」
聞くやいなや俺の口は勝手に白状し始める。