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彼女はボクに発情しない

第23章 物想う秋への間奏曲


あの、酔っぱらい事件の後、ふたりともその話題には触れていなかった。だから、陽太は私があのときのことを忘れている、と思っているかもしれない。

なんであんなこと聞いちゃったのか、後から考えると赤面ものだが、あれがいわゆる『酔った勢い』というやつだろうか。

『陽太は・・・発情した、私は嫌い?』
ずっと、聞きたかったこと。怖くて怖くて確認できなかったことだった。
でも、陽太は嫌いじゃないと言ってくれた。それこそ酔っ払っててよく分からなかったが、多分、あの言葉に嘘はない。

陽太は嘘をつくのがとても下手だから、すぐに分かる。これは自信がある。
だから、嬉しい。とても嬉しい。

あれ以来、陽太の顔を見ると、それだけで嬉しくなってしまう。
一緒にいないときも、陽太のことばかり考えるようになってしまった。

これを人は『恋』と呼ぶのかもしれない。

私の心の中に、小さくて、可愛らしいフリルの白いワンピースを着た私がいる。
その白い私がそっと囁く。
『陽太にキスしちゃおうよ』
心の反対側で、これまた小さい私が反論する。
『そんなことしちゃ嫌われちゃうよ』
こっちは白い襟付きシャツに黒のパンツでシックにまとめている。
白い私と黒い私が、しばらく侃々諤々と議論する。

なんとなく、白が優勢だ。
最後には、『寝てる間にキスするなんて、自分がされたらどう思うの!?』という黒の反論に、白が、
『えー、私は陽太だったら、嬉しい♡』
と言い放ち、その無邪気な魅力に黒があえなくKO。白が勝利する結果となった。

なので、薄暗がりの中、私はゆっくりと陽太に顔を近づける。
心臓が高鳴る。自分の心臓が耳元に移動したようだ。

いつもありがとう・・・。

心の中で、彼に伝える感謝の言葉。
バレませんように。祈りながら、ゆっくりと、私は陽太の唇にそっと自分の唇を重ねた。
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