第19章 キスに焦がれる輪唱曲
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夕闇に染まる海は綺麗だった。街の明かりから離れ、喧騒も一段落している。あまりこの時間に海辺を歩こうという人もいないのか、人もまばらだった。
都会なので、星はあまり見えないが、猫の爪のような月が空に昇っている。
波の音が静かに響いていた。
さくさくさくと、二人が砂浜を踏みしめる音。
さっきからは黙ってボクの横を歩いていた。
何も言わずに、黙ってがボクのそばに寄ってきた。腕が触れ合うほどの距離。
その温度と、時折触れる手の甲のしっとりとした感触にボクはドキッとする。
不意にがボクの手をキュッと握る。
なんとなく、何かを言ってはいけない気がして、びっくりはしたけども、ボクは黙っていた。
そのまま、歩き続ける。
時折、海面に銀色の魚が跳ねるのが見えた。
遠くの海をタンカーだろうか、赤い光がゆっくりと移動している。
静かな時間だ。
ここには誰もいない。が『発情』する心配もない。
小学校4年生のとき、が初めて発作を起こしてから、ボクはいつも緊張していた気がする。ボクが一番安心するのは、結局はこういうときだ。
が誰とも一緒にいなくて、ボクがいる。
これなら、が悲しむことは何も起こらない。
でも、それじゃあ、ダメなんだ。
優子とが話をしているのを見て思った。
今日、一緒に過ごしてやっぱり思った。
には普通の女の子みたいに、友だちをいっぱい作って、楽しいこともたくさんして欲しい。ボクと一緒にいるだけじゃ、ダメなんだ。なんとか、をボクから解放しないと。
「陽太」
「」
一緒に声を出してしまった。気が合うな、変なところで。
「なに??」
の言おうとしていることのほうが大事な気がする。
何かをずっと言いそびれているような感じだったから。
ギュッと、が手に力を込めたのが伝わってきた。
「私・・・陽太に謝りたい」
なんか、予想しなかった言葉が来た。どういうこと?
「ずっと、謝りたかった。私のせいで、よ・・・陽太を縛っちゃって。」
見ると、の頬に涙が光っていた。