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彼女はボクに発情しない

第19章 キスに焦がれる輪唱曲


ボクはチーズ入り、彼女はホワイトソースのものにしていた。美味しいパンがついていて、とてもよかった。彼女いわく、「ルリとこの間来て、美味しかったから、陽太くんと来たかった♡」だそうだ。

公開してからしばらく経っている作品だったので、特に席の予約はしていないということだった。なので、映画館には少し早めに行くことにした。

この間に引き続き、またまた優子と映画館に来くることになってしまった。

今日、出掛けに思わず鼻歌を歌っているのを妹の風香に聞きとがめられたのが思い出される。
『何?そんなウキウキしてどこ行くわけ?デートじゃあるまいし』
などと言う。我が妹ながら、兄のことをよく分かってる。

だが!今日は違うのだよ、君。

『ふっふっふ・・・。兄にもな、来たんだよ、モテ期ってやつかな?はーっはっはっは!!』
思わずそっくりかえりそうなほど胸を張ってしまい、妹に非常にバカにされたような顔をされたが、まあいい。なんか、思った以上にモテている!

発券機で席を選ぶと、上映までの時間は特にすることがない。映画館に付属のショップを覗いたり、ポップコーンのラインナップを眺めたりして過ごす。
「ねえ、陽太くん!こっち来て」
優子が呼ぶので行ってみると、ちょっと離れた所に眺望の良いところがあった。ソファもあり、ここでゆっくり映画開始まで待てるようだ。

ちなみにこの映画館は地上17階にあるので、全面ガラス張りのこの空間はとっても眺めが良い。外は真っ青な空に真白な入道雲がもくもくと立ち上がっている。そのコントラストが夏っぽくて素敵だ。

横並びに座ると、彼女が少しボクの方に寄ってくる。優子の体温がTシャツ越しに伝わってくる。ほのかに花のような香りがしている。

「今日は・・・来てくれて、ありがとう。嬉しかった・・・。」
そして、そのままコトンと、ボクの肩に頭を乗せる。

ち・・・近い・・・。

振り払うわけにも行かず、かといって抱き寄せるというのもできず、ボクはまるで石像のように硬直していた。

「あ・・・ご・・・ごめん。この間は、その・・・急用で・・・」
花火大会のこと、ずっと気になっていた。
が大事だ。でも、あれはやっぱりひどかった。

「うううん。大丈夫。よほど気にしてくれてたんだね。二回目だよ。謝るの」
そ・・・そうだっけか?
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