第16章 愛しき人を想う独奏曲
【Cadenzas for the loved one】
まだ、頭がくらくらしている。
手足はスーッと冷えているのに、首から上は火照ったように熱い。そして、心臓の鼓動だけをやけに強く感じていた。
ルリが手洗いに行く、というので待っていたとき、目の前を高山くんと、彼に手を引かれたさんが通りかかるのを見た。それで、悪いとは思ったけど、後をついていってしまった。
その結果、森の奥で二人の痴態を見ることになる。
私のことを探し回っていたルリと合流した後も、心ここにあらずだった。
とてもじゃないけど、お祭りを楽しめる雰囲気じゃないので、『ちょっと人に酔ったかもしれない』と適当なことを言って、早々に帰ることにした。
家に着いても、まだ心は落ち着いていなかった。
二人はあんなことまでする仲だったの?
行為の最中、あられもない姿でさんは高山くんに「好き」を連発していた。
普段のさんからは想像できないほど、ものすごく色っぽくて、淫らな様子だったが、不思議と嫌な感じはしなかった。
むしろ、好きな人とあんなふうに嬉しそうに交われるのが、羨ましいとさえ思ってしまう。
私も・・・したい・・・のかな?
私はこれまで男の子と付き合ったことはないし、当然エッチな経験もない。この間、高山くんと手を繋いだのが初めてなくらいだ。
そういうわけで、これまでの人生では自分の『性欲』を意識することはなかったが、さんのむき出しの性欲の発露を見せつけられて、自分の心がうち震えるのを感じた。
私も・・・高山くんに・・・ああいうこと・・・したい。されたい。
疑問が、確信に変わる。幼い恋が、性欲の湿り気を帯びて、その形を変えていくのが分かった。
これは、悪いことなのだろうか?それとも、成長なのだろうか?
好きの気持ちを、あんなふうに肉体全部で表現したい。
あんなふうに、好きな人から愛されたい。
そんな、自分の肉体の生々しい欲望を意識して、若干戸惑う。
自然と手が胸に伸びる。
もしも、この指が高山くんのものだったら・・・。
そう思いながら、そっと胸を撫でてみた。気持ち良い、というよりはくすぐったい。
ただ、あのときの情景を思い出すと、自分の乳首がピンと隆起してしまうのは感じた。