第42章 勉強会
――そう。
上鳴とて、今日まで何もしていなかったわけではない。
日曜日までの数日間。
ユカリがわざわざ自分のために作り、教室まで届けてくれたものがあった。
『良かったら使ってね。日曜日だけじゃ時間足りないだろうし』
そう言って笑顔で渡された――『上鳴専用・特別問題集』
あの瞬間の感動は、今でも忘れられない。
自分のためだけに作ってくれた。
その事実だけでも嬉しかったのに。
実際に開いてみれば、驚くほど分かりやすかった。
上鳴が苦手そうな部分には丁寧な解説がついていて、難しい問題の前には基礎を確認する問題まで用意されている。
おかげで、普段なら途中で投げ出していたような問題にも、少しずつ向き合えるようになった。
「……ユカリ先輩、マジで優しすぎるんだよなぁ」
「ん?」
「いや、なんでもないっす!」
慌てて誤魔化す上鳴。
そんな彼を見て、ユカリはくすっと笑った。
「ふふ、変なの」
その笑顔を見ながら、爆豪は隣で小さく息を吐く。
上鳴が浮かれる気持ちも、まあ分からなくはない。
ユカリにあんなふうに笑いかけられて、素直に褒められれば。
自分だって、何度そうやって不意打ちを食らったか分からない。
ふと隣を見る。
休日らしい私服姿で、楽しそうに笑っているユカリ。
(……ったく、……やっぱ可愛いな)
何度も見ているはずなのに、未だにふとした瞬間にそう思う。
爆豪はそんな自分の考えを表に出すことなく、ただいつものようにユカリの隣を歩いた。
やがて、ユカリが自分の部屋の前で足を止める。
「よし」
振り返った彼女が、二人へ笑顔を向ける。
「じゃあ、入って。始めよっか!」
「はい!」
カチャリ。
ユカリの手によって、部屋のドアがゆっくりと開かれた。