第42章 勉強会
その時―――
「……あ、ごめんね!出るの遅くなっちゃって!」
廊下の向こうから、ぱたぱたと軽い足音が近づいてきた。
「一年生の時の参考書探してたら、見つけるのに時間かかっちゃって……!」
少しだけ息を弾ませながら、こちらへ駆け寄ってきたのは私服姿のユカリだった。
学校で見慣れた制服とは違う、柔らかな雰囲気の服装。
髪も普段より少しラフにまとめられていて、休日らしいその姿が、いつものユカリとはまた違った可愛らしさを引き立てている。
「…………」
上鳴の動きが止まった。
(うわっ……!)
思わず目を見開く。
(かわっ……!!)
あまりの可愛さに、頭の中から言葉が一瞬で吹き飛んだ。
普段、制服姿で見るユカリも十分すぎるほど可愛い。
けれど、私服になるとまた別格だった。
「……上鳴くん?」
「へっ!?あ、いやっ、なんでもないっす!」
慌てて視線を逸らす上鳴。
その横では、爆豪がじろりと上鳴を睨んでいた。
「……何ボケッとしてんだ」
「いや、だって……」
思わず言いかけたものの、上鳴は慌てて口を閉じた。
そんな二人には構わず、ユカリは環へ向き直る。
「ありがとう、環」
「……うん」
環は小さく頷いた。
そして、二人を見てぽつりと呟く。
「……勉強会、頑張って」
「あざっす!頑張ります!!」
それを見届けると、環は踵を返し、そのままリビングへと戻っていった。
「じゃあ、私の部屋行こっか」
ユカリが二人を振り返る。
「はい!」
上鳴が元気よく返事をした。
爆豪も無言のまま後に続く。
三人で廊下を歩き始めると、ユカリがふと思い出したように上鳴へ振り返った。
「そういえば、上鳴くん。渡した問題集、どうだった?」
「あ!」
上鳴の顔がぱっと明るくなる。
「わかんないとこもあったんすけど、わかるところは全部やりました!」
「本当?」
ユカリが嬉しそうに目を細める。
「ちゃんと頑張ってるね。えらい」
「へへっ……!」
たったそれだけの言葉なのに。
上鳴の顔は、あっという間にだらしなく緩んだ。
褒められた。
しかも、あのユカリ先輩に。
それだけで、ここ数日頑張ってきた甲斐があったと思えてしまう。