第42章 勉強会
上鳴は腹を括り、一気に言葉を重ねた。
「なんつーか……先輩って、教え方がめちゃくちゃ分かりやすいんだよ」
「…………」
「俺みたいなアホでも、ちゃんと理解できるように説明してくれるっつーか」
八百万や飯田が悪いわけじゃない。
むしろ二人とも、ものすごく親切に教えてくれた。
ただ――頭のいい人の説明は、頭のいい人向けなのだ。
「ヤオモモとか飯田って、説明すげぇ丁寧なんだけどさ。俺、そもそも何が分かってないのかすら分かってねぇから……」
上鳴は参ったように苦笑する。
「でもユカリ先輩は、俺がどこで引っかかってんのか見つけてくれて。そこまで戻って、一個ずつ教えてくれんの」
あのときのことを思い出す。
分からない問題を前にして、情けなくなっていた自分。
それでもユカリは、呆れた顔ひとつしなかった。
『ここ、ちょっと難しいよね』
そう笑って、分からないことを責めるのではなく、分かるところまで戻って教えてくれた。
「それにさ……」
上鳴は、少しだけ声を落とした。
「俺、先輩になら『分かんない』って言えるんだよな。何が分かってないのかすら分かってないって言っても、笑わねぇし。バカにもしねぇし」
上鳴は机の上の問題集へ視線を落とす。
「ちゃんと俺が分かるまで付き合ってくれるんだよ。……だから、マジで助かるんだよな」
下心など、微塵もなかった。
特別な恋愛感情があるわけでもない。
ただ純粋に――勉強を教えてもらいたい。
そして、赤点を回避したい。
それだけだった。
だからこそ。
上鳴は両手を合わせ、まっすぐに爆豪へ向き直る。
「だからお願い!」
そして――
「ユカリ先輩を俺に貸してください!!」
ほとんど土下座する勢いで、上鳴は勢いよく頭を下げた。
「……………」
そのまま数秒間、返事がない。
上鳴の額にじわりと汗が滲んでいく。
(……ヤバい。これ、爆破されるやつじゃね?)