第42章 勉強会
上鳴は、なんとなく分かっていた。
ユカリなら。
あの人の教え方なら、自分でもちゃんと理解できる。
前に教えてもらったときもそうだった。
難しい言葉を並べるのではなく、上鳴がどこでつまずいているのかを一つずつ見つけて、そこから丁寧に説明してくれた。
だからこそ、今の上鳴には最後の希望のように思えた。
完全にお手上げ状態になった上鳴は、机にべったりと突っ伏したまま、隣にいる爆豪へ声をかける。
「……ばくごー」
「あ?」
「お願いがあんの」
「お願いだァ……?」
爆豪の眉が跳ね上がった。
嫌な予感しかしないのだろう。
上鳴は顔を上げ、恐る恐る爆豪の様子を窺う。
そして――意を決した。
「ユカリ先輩、貸してくんね?」
「…………は?」
一瞬、空気が凍りついた。
爆豪は瞬きすらせず、上鳴を見つめている。
やがてゆっくりと眉間に皺が寄り、額にはっきりとした青筋が浮かび上がった。
(うわぁ、めちゃくちゃ威嚇されてる……!)
上鳴の背筋を、冷たい汗が伝う。
「や、だからその……ユカリ先輩を貸してほし――」
「殺すぞ」
「いや聞いて!?まず話聞いて!?」
命の危険を感じた上鳴は、両手をぶんぶん振りながら必死に身を乗り出した。
「違ぇから!そういう意味じゃねぇから!」
「どういう意味だコラ」
「この前の小テストあったじゃん!俺が85点取れたやつ!」
「あ?」
「あのとき実は、ユカリ先輩に教えてもらったんだよ!」
爆豪の表情がぴたりと固まる。
「……は?」
「たまたま職員室にいた先輩が、俺が勉強やばいの知って声かけてくれてさ!それで小テストの範囲教えてもらったんだけど――」
上鳴はちらりと爆豪の顔を見る。
相変わらず怖い。
むしろ話せば話すほど、目つきが鋭くなっている気がする。
だが、ここで引いたら期末テストで死ぬ。