第42章 勉強会
「爆豪まじ助けて……!」
「あぁん!?」
爆豪がギロリと睨みつける。
「なんで俺がテメェの頭に付き合わなきゃいけねぇんだよ、バカが!!」
「頼むって!マジでヤバいんだって!」
「知るか!!」
「赤点取ったら除籍なんだよぉぉ!」
「だったら死ぬ気でやれや!!」
「だからその死ぬ気でやってんの!でも何もわかんないの!」
「…………チッ」
しばしの沈黙。
爆豪は盛大に舌打ちすると、机の上の問題集を乱暴に閉じた。
「………座れ」
「え?」
「教えてやるっつってんだよ」
「マジ!?」
こうして――
上鳴は爆豪の隣に座ることになった。
……だが。
ここからが、本当の地獄だった。
「おい」
「はい」
「なんでここがマイナスになる」
「えっ?だって、ここプラスだったから、ひっくり返して――」
「ひっくり返すんじゃねぇ!!移項だろうがクソが!!」
「ヒッ!」
爆豪の怒声が教室中に響き渡る。
「符号が変わんのは何でだ!?」
「え、えーっと……なんとなく?」
「なんとなくで解いてんじゃねぇ!!」
「すみませんでした!!」
一問。
また一問。
上鳴が問題を解くたびに――
「違ぇ!!」
「えっ!?」
「そこじゃねぇ!!」
「えっ、どこ!?」
「だからさっき説明しただろうが!!」
「さっきの説明がわかんなかったんだって!!」
「じゃあ聞けや!!」
「怖くて聞けねぇんだよ!!」
「知るか!!」
完全に負の連鎖である。
上鳴の手は恐怖で震え、問題集は一向に進まない。
勉強しているはずなのに、理解力が上がるどころか寿命だけが確実に削られていく。
(……無理だ)
額に冷や汗を浮かべながら、上鳴は思った。
(爆豪に教えてもらってたら……)
爆豪が隣で問題集を睨みつける。
「次」
「ひぃっ」
(期末テストの前に、俺の命が尽きる……!)
もう駄目だ。
上鳴の精神は限界だった。
そんなとき――
ふと、脳裏に一人の少女の姿が浮かんだ。
柔らかな笑顔。
優しい声。
そして、どこまでも丁寧に教えてくれる。
「………あ」
上鳴の目に、わずかな光が戻る。
(いるじゃん……)
そうだ。
なぜ今まで思いつかなかったのか。
あの人なら。
あの人なら、きっと――