第42章 勉強会
「ヤオモモぉ……飯田ぁ……頼む、俺に勉強を教えてくれ……!」
「もちろんです、上鳴さん!」
八百万は快く頷き、教科書を覗き込む。
「ここはですね。まず基本となる概念を論理的に分解して、この定義に基づいて命題を構築すれば――」
「上鳴くん!それ以前に基礎の理解が不足している!」
今度は飯田が眼鏡を押し上げ、熱のこもった声で説明を始めた。
「まずはこの専門用語の歴史的背景から順を追って理解しよう!この理論が確立されたのは――」
「…………」
親切だ。
ものすごく親切だ。
二人とも、本気で上鳴を助けようとしてくれている。
ただし――
「…………」
上鳴の目から、光が消えていった。
説明が進むたびに、頭の上へ疑問符が増えていく。
「えーっと……つまり……?」
「ですから、ここを前提として考えた場合――」
「ぜ、前提……?」
「そうだ!この定義を踏まえれば自然と導き出される!」
「定義……?」
やがて。
上鳴の頭から、ぷしゅうぅぅ……と煙が出そうな勢いで思考が停止した。
(無理だわ……)
八百万と飯田の説明は完璧だ。
完璧すぎる。
だが、そもそもの理解力が追いついていない。
「……ごめん、二人とも」
上鳴は力なく机に突っ伏した。
「俺の脳みそじゃ、その説明を理解するための説明が必要だわ……」
「上鳴さん!?」
「なにっ!?」
二人が慌てる中、上鳴は最後の手段へと目を向けた。
教室の一角。
周囲の喧騒など一切気にする様子もなく、黙々と問題集を解いている男。
学年屈指の成績優秀者。
爆豪勝己。
(……アイツなら)
頭はいい。
めちゃくちゃ頭はいい。
そして何より――
「……たぶん、俺と同じレベルの言葉で説明してくれる気がする」
「誰がテメェと同じレベルだコラ」
「聞いてた!?」
上鳴は反射的に爆豪の机へ駆け寄った。