第42章 勉強会
ユカリの教え方は、驚くほど丁寧だった。
上鳴が「わからない」と眉を寄せれば、決して「さっき説明したでしょ」などとは言わない。
難しい公式も、専門用語も、上鳴が理解できるところまで一つずつ噛み砕いて説明してくれる。
「ここはね、難しく考えなくていいよ。まず、この数字をこっちに移して――」
「……あれ?」
「うん?」
「なんか……ちょっとわかってきたかも」
「本当?じゃあ、もう一回自分でやってみようか」
「はい!」
少しでも理解できれば、すぐに褒めてくれる。
間違えても、嫌な顔ひとつせず、また別の方法で説明してくれる。
その姿は、上鳴にとってまさに天使そのものだった。
(ユカリ先輩……マジで優しすぎる……!)
そんな上鳴の心の中では、密かにユカリへの尊敬度が爆発的に上昇していた。
***
―――そして、迎えた5限。
教壇に立つ相澤が、採点を終えた答案用紙の束を手にしている。
教室中が静まり返る中、淡々と答案を配っていく。
やがて、一枚の答案用紙を手に取った。
「上鳴」
「は、はい!」
名前を呼ばれ、上鳴の背筋が伸びる。
相澤はいつも通り、感情の読めない顔で答案用紙を差し出した。
「次もこの点数キープしろよ」
「へ?」
何気なく受け取った答案用紙。
その一番上には――
赤ペンで、大きく。
『85点』
「…………」
上鳴の目が見開かれる。
「……え?」
次の瞬間。
「っしゃあああああ!!」
教室中に上鳴の歓喜の声が響き渡った。
「85点!?俺が!?マジで!?」
「え、何があった!?」
「マジかよ、やるじゃん上鳴!!」
「おいおい、あの上鳴が85点だぞ……!? 明日は槍でも降るんじゃね!?」
周りから飛んでくる驚きと称賛、そして愛ある弄りの声。
いつもなら「槍ってなんだよ!」と噛みつくところだが、今のデンキ・カミナリには全てが心地よい祝福の歓声にしか聞こえない。
テスト前まで、あれほど絶望していたのが嘘のようだった。
上鳴の心は、一気に快晴へと変わる。
(夢、じゃないよな……?)
答案をもう一度見る。
何度見ても85点。
(俺、天才じゃね……!?)
思わず頬が緩む。