第42章 勉強会
「相澤先生、何かあったんですか?」
「こいつだ」
「え?」
「次赤点なら除籍」
「えぇ!?」
ユカリまで目を丸くして驚く。
「大変じゃないですか」
「だろ?」
「先生、それ本当なんですか?」
「…………」
一瞬だけ沈黙が流れる。
「本人次第だ」
(本当なんだぁぁぁ!!)
上鳴の心は完全に折れた。
そんな彼を、ユカリは優しく見つめる。
「上鳴くん、勉強苦手?」
「はい……」
「どれくらい?」
「九九はいけます!」
「そこじゃないかなぁ……」
困ったように眉を下げて笑うユカリ。
『天使か』と上鳴は心の中で叫んだ。
「とりあえず5限の小テスト。範囲教えてやるから残りの昼休みの時間で頭叩き込んで80点取れ」
相澤は机の書類に目を落としたまま、無慈悲に宣告した。
「や、無理っすよ80点とか!?」
「小テストだ。いけるだろ。いけなきゃそのまま人生終了コースだ」
「いやだって5限って1時間後ォ!!」
パニックになる上鳴の様子を見て、ユカリは少し考えてから相澤を見た。
「先生」
「?」
「私、教えましょうか?」
「……いいのか」
「もちろんです」
え?
え?
え?
「私も一年生の頃、勉強苦手な子見てたことありますし」
「助かる」
「じゃあ隣の空いてる教室借りますね」
「頼む」
決まった。
え、決まった。
「よし、行こう上鳴くん」
ユカリは上鳴の顔を覗き込むようにして、にこっと微笑んだ。
「頑張って80点取ってね?」
……。
…………。
「頑張ります!!!!」
上鳴は人生で一番大きな声を出した。
除籍回避どころの話ではない。
憧れの先輩とマンツーマンの即席勉強会。
(俺、勝ち組じゃね……!?)
―――しかし、この時の上鳴はまだ知らなかった。
ユカリの教え方が天才的に分かりやすいということも。
そしてその結果、彼女の解説でしか知識を吸収できなくなった彼が、あの爆豪に命がけで許可を取りに行く破目になるということも。