第40章 告白
だが、それも束の間のこと。
ユカリがふっと小さく息を吐き出すと、迷いを含んでいた瞳が『指導者』のそれへと切り替わる。
それを見た爆豪もまた、口元を引き締めて獰猛なまでに鋭い視線を返してきた。
「爆豪くん、準備出来てる?」
「ああ」
短い言葉を交わした瞬間、二人の間に流れる空気がガラリと変わった。
そこには先ほどまでの甘い雰囲気とは違う、確かに強くなる為の空気が流れる。
訓練は訓練だ。
ユカリも本気で教えるし、爆豪も本気で身につけに来ている。
「よし、じゃあまずは……」
あの日の切島と同じように、すっと人差し指を立ててみせた。
「―――基礎中の基礎、1時間連続ダッシュステップ」
「……ハッ、上等だ」
開口一番に突きつけられたメニューにも気押されることなく、爆豪は不敵に口元を歪めてみせた。
ダッシュだろうが地獄だろうが関係ねぇ。
求められるハードルが高ければ高いほど、それを叩き潰して超えていくのが爆豪勝己だ。
両手にバチバチと小さな爆炎を散らし、鋭い眼光で体勢を低くする。
(頑張れ、爆豪……!)
一足先にユカリの指導を受け、その地獄のような厳しさを身をもって知っている切島だけが、心の中でエールを送るのだった。
***
ユカリが爆豪に突きつけたのは、かつて切島が地獄を見たメニューと全く同じ、地味で容赦のない基礎ステップの繰り返しだった。
だが、爆豪の動きは別格だった。
訓練場の床を爆発的なスピードで駆け抜け、ユカリの短い指示が飛ぶと同時に、強引に体をひねって真横へ、斜め後ろへと一瞬で軌道を弾けさせる。
減速なんて微塵も挟まない。
トップスピードから一瞬でブレーキをかけ、そこから間髪入れずに次の方向へ一気に突き進む。