第39章 Team Up Mission
――現在。
静まり返った深夜の休憩スペース。
月明かりに照らされたユカリの横顔を見つめながら、轟は胸の奥でそっと呟く。
(………ずっと、あの日からだったんだな)
桜の日から始まった初恋が、今、静かに幕を下ろそうとしている。
簡単に割り切れるはずもなかった。
本当なら手を握りしめて引き留めたかったし、爆豪に向くその瞳を自分だけに向かせたい想いが無いわけじゃない。
けれど。
そんなことをすれば、優しい彼女を苦しめてしまう。
誰よりも彼女の幸せを願い、自分に誠実でいてくれた彼女を、これ以上困らせたくはなかった。
「……ユカリ先輩」
轟は静かに立ち上がる。
驚いて顔を上げたユカリのもとへ迷いなく手を伸ばすと、その小さな身体をぎゅっと抱きしめた。
「っ……轟、くん……?」
ユカリが息を呑む。
伝わってくる、確かな体温。
溢れ出そうになる愛おしさを繋ぎ止めるように。
けれど絶対に痛めつけないよう絶妙な力加減で、轟は彼女の肩に顔をうずめた。
「……最後に、一度だけ」
低く掠れた声が、ユカリの耳元に落ちる。
「……抱きしめさせてくれ」
「……うん」
ユカリは拒まなかった。
彼の背中にそっと手を回し、静かにその温もりを受け止める。
轟の心の中に残る、甘く切ない初恋の残り香。
ユカリの優しさと体温を、自分の全身に刻み付けるように。
轟は月明かりの下で、静かに目を閉じるのだった。