第39章 Team Up Mission
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それは、桜の蕾が一斉に開き、春の陽射しが校庭を優しく包み込んでいた入学式の日。
雄英高校の制服に初めて袖を通し、轟が校門を潜った初日のことだった。
突然、突風が校庭を吹き抜ける。
ひらひらと舞い散る桜吹雪とともに、一枚のプリントが轟の足元へと飛んできた。
轟がそれを静かに拾い上げた時、向こうから慌てたような声が聞こえてきた。
「ごめんね! 風で飛んじゃって――」
両腕いっぱいに書類を抱えて走ってきた先輩。
それが、ユカリだった。
「あ、いえ……」
一枚のプリントを手渡すと、ユカリはホッとしたように胸を撫でおろし、花がほころぶような笑みを浮かべた。
「拾ってくれてありがとう。新入生?」
「はい」
短く答えた轟を、ユカリは至近距離からまっすぐに見つめた。
右の黒と、左のオパールのような青。
彼の左右非対称の瞳を怖がるでもなく、奇異の目で見るでもなく――
ただ素直に、感嘆の息を吐くように呟いたのだ。
「……綺麗な瞳」
自分の目をまっすぐに見つめて、柔らかく笑うユカリ。
風に舞う桜の輪郭と、光を浴びて輝く彼女の笑顔。
(……こんなに、綺麗な人がいるのか)
当時の轟は、自分の胸を貫いた衝撃の正体を知らなかった。
ただただ、その光景の美しさに息を呑み、言葉を失っていたのを今でも鮮明に覚えている。
『ユカリー! 早くしないと遅れるよー!』
遠くから、明るい声がユカリを呼んだ。
髪を揺らして手を振っているのは、同じ三年生の波動ねじれだった。
「あ、わかった!すぐ行くー!」
ユカリは返事をすると、最後に轟へ向かって優しく目を細めた。
「入学おめでとう」
「…………」
「またね」
それだけだった。
あの日、二人で交わした言葉はたったそれだけ。
けれど。
あの日舞っていた桜の香り。
彼女の柔らかな声。
眩しすぎる笑顔。
それが轟の心から消えることは一度もなかった。