第39章 Team Up Mission
ユカリは一度言葉を切り、膝の上で深く握りしめた手に視線を落とす。
指先が、微かに震えていた。
呼吸を整える小さな間。
静寂の中で、月明かりだけが二人を優しく照らしている。
やがてユカリは再び顔を上げた。
「でも……ごめんね」
申し訳なさに押し潰されそうになりながらも、決して目を逸らさない。
「轟くんの気持ちには、応えられないの」
静かな決意を込めたその言葉。
けれど、轟の心は不思議なほど波立たなかった。
理由は分からない。
ただ、目の前にいるユカリという人間が、自分にとってどこまでも尊く、大切な存在であることには変わりなかった。
「…………」
轟は少しだけ窓の外へ視線を向けた。
夜風にかき消されそうなほど小さな息を吐き出すと、ゆっくりと彼女へと目を向ける。
自分のために申し訳なさそうに視線を落とす彼女の姿。
それがどうしようもなく胸に痛かった。
こんな風に自分を傷つけまいと真剣に悩み、まっすぐに答えてくれた彼女に、これ以上、自分を責めてほしくはなかった。
ユカリのその優しさが、自分は誰よりも大好きだったのだから。
「……ユカリ先輩」
轟は穏やかな声で、そっとその名を呼んだ。
「……謝らないでください」
静かに紡がれた言葉に、ユカリが小さく肩を揺らして顔を上げる。
「先輩が悩み抜いて、俺に真っ直ぐ伝えてくれたこと……すごく嬉しいです。だから、そんな顔しないでほしい」
そう言って小さく微笑む轟の瞳に、困ったように優しく目を細めるユカリが映る。
断られてなお、轟の胸を満たしていたのは穏やかな愛おしさだった。
振り向いてもらえなかったことよりも。
こうして自分に心を砕いてくれた彼女の柔らかさが。
あたたかさが。
たまらなく愛おしいのだ。
―――ああ、そうだ。
思い返せば、すべてはあの春の日から始まっていたのだと。
轟の意識は、静かに過去へと遡っていった。