第39章 Team Up Mission
やがて、エコーの肩が震え始める。
「はは……っ」
口元を押さえ、声を出して笑い出した。
「ははは……降参だ……君には、まったく敵わないな」
涙で濡れた顔で浮かべたその笑顔は、この三日間でユカリたちが一度も目にしたことがないものだった。
作られた「完璧なヒーロー」の笑顔じゃない。
過酷な運命も、抱えてきた苦しさも、自分自身の弱さも――
そのすべてを泥臭く受け入れた人間だけが見せることのできる、誇らしく、どこか吹っ切れたような穏やかな笑顔。
その顔を見た瞬間。
ユカリの胸の奥につかえていたものが、すっと消えていくような気がした。
「……ユカリさん」
エコーはゆっくりと立ち上がり、乱れた服を整える。
そして机の上に置かれたあの大切なノートへと視線を落とした。
「このノートは……これからも書き続けるよ。僕が聞いた命の証を、消してしまうわけにはいかないからね」
「はい」
「でも……これからは、辛い時は『辛い』って、周りのみんなにちゃんと言うことにするよ……一人で抱え込むのは、もうやめだ」
エコーはユカリに向かって、心からの感謝を込めて深々と頭を下げた。
「僕を……一人の人間として救ってくれて、ありがとう。ユカリさん」
「……いいえ」
ユカリは嬉しそうに目を細め、首を振った。
「お互い様です」
***
資料室の扉が静かに開いた。
出てきたエコーとユカリの視線の先に、廊下の壁に寄りかかっていた環と轟の姿があった。
轟は二人を見ると、何も言わずにただ「お疲れ様です」と短く一礼した。
環も小さく頭を下げる。
腫れたエコーの目にも、ユカリの少し赤くなった目元にも、一切触れることはなかった。
二人のその絶妙な配慮と優しさに、ユカリはフッと口元を緩める。
「夜分遅くにすまなかったね。みんな、今度こそゆっくり休んでおくれ」
エコーはどこか肩の荷が下りたような穏やかな顔でそう言い、三人を見送った。