第39章 Team Up Mission
現場に重い沈黙が落ちた。
人を脅かし、この事故を引き起こした元凶。
世間から「悪」と呼ばれる存在。
一瞬、救助の手が躊躇で止まる。
「――何をしているんですか!!」
静寂を切り裂いたのは、エコーの叫びだった。
爆発の危険も省みず、彼は熱気の中へ飛び込むと、車内に残された男へ必死に手を伸ばした。
「誰であれ、目の前に助けられる命があるなら……っ!手を伸ばすのがヒーローだ!!」
涙を浮かべんばかりの必死な顔で、エコーは男の手を強く、強く握りしめる。
だが――引き抜かれた男の体は、すでに弱々しく脱力していた。
現場の医療班が駆けつけ、首元に触れる。
「……ダメだ。心肺停止……死亡を確認」
静まり返る現場。
けれどエコーは手を放さず、冷たくなり始めた男の手に、静かに自分の手を重ね直した。
「………個性――『遺声』」
雨の音だけが響く中、エコーの瞳がかすかに揺れる。
男の意識はすでに途絶えていた。
けれど、彼が死に際に残した思いの残響が、エコーの脳裏へと直接流れ込んでくる。
まず脳裏に響いたのは、かすれて途切れ途切れになった、実の母親へ捧ぐ後悔の声だった。
『……母、さん』
エコーの手が、ぴくりと跳ねる。
『ごめんな……まともな息子になれなくて……』
それだけを言い残し、男の意識は暗闇へと沈みかけていた。
――だが、最後の最後に残っていたのは、死の直前、自分を救おうと必死に手を伸ばしてくれたヒーローの記憶だった。
涙を浮かべんばかりの顔で、自分の手を強く握りしめてくれたエコーの顔。
その温もりに触れた瞬間の思いが、最後に重なる。
『……ヒーロー……あんた……』
『そんな泣きそうな顔で……俺みたいな奴の手……握るなよ……っ』
途絶える意識の中で、ヴィランが遺した最後のひとこと。
『……あったかかった……な……』
それだけだった。