第39章 Team Up Mission
「……エコーさん?」
声をかけると、エコーはハッとしたように顔を上げた。
「あれ、ユカリさん」
彼は驚いたように目を丸くし、すぐにいつもの穏やかな笑みを浮かべた。
「眠れなかったかい?」
「はい……ちょっとだけ」
「そうか」
エコーは優しく頷き、隣のパイプ椅子をトントンと叩いた。
「よかったら、少し話す?」
「……はい」
ユカリは吸い寄せられるように室内へ入り、彼の隣に腰掛けた。
自然と視線が机の上のノートへと向かう。
びっしりと並んだ手書きの文字。
日付、名前、年齢。
そしてその隣に刻まれた、短い言葉たち。
『娘へ。誕生日おめでとう』
『母さん、ごめん』
『ありがとう』
一冊だけではなかった。
十冊、二十冊……棚を見上げれば、背表紙に年号が書かれた同じノートが何十冊もズラリと並んでいた。
ユカリは息を呑む。
「……これ、は……」
エコーはノートの紙面を、愛おしそうにそっと撫でた。
「僕がヒーローになってから今まで聞いた……"最期の言葉"だよ」
「……全部、ですか?」
「うん、全部」
静かだが、ずっしりと重い返事だった。
「遺族へ届けたあとも、こうして自分の手で書き残しているんだ」
「どうして……そこまで?」
ユカリの問いに、エコーは少しだけ視線を落とした。
「……忘れたくないんだよ」
「…………」
「この人たちが、確かにこの世界で生きていたという証を。無念にも途切れてしまった命の……最後の言葉だけでも、僕が残しておきたくてね」
エコーは自嘲気味に小さく笑った。
「まあ……ただの僕の自己満足なんだけど」
ユカリは言葉を失った。
ノートの一行一行、一冊一冊が、誰かが必死に生きた人生そのものだ。
誰かの、やり直しのきかない最期だ。
その果てしない悲しみと切なさを、この人はたった一人で……何百人分も抱え込み続けてきたのだ。
「……重く、ないんですか……?」
耐えかねて、胸の奥から言葉がこぼれ落ちていた。
エコーは少しの間沈黙し、何かを振り払うようにいつもの優しい笑顔を作った。
「重いよ。……でも、それも僕の仕事だからね」