第39章 Team Up Mission
轟も環も、その言葉を疑うことなく受け止めた。
「……すごい人だ」
轟が深々とした尊敬を込めて呟く。
環も小さく頷いた。
「俺には……とても、できない……」
二人とも、人を救い続ける「強いプロヒーロー」として、エコーの背中を憧れと敬意の眼差しで見つめていた。
けれど。
ユカリだけは、足が地面に縫い付けられたように立ち尽くしていた。
(……違う)
胸の奥で、警鐘のようなざわつきが激しく鳴り響く。
ユカリは、昔から周囲の人の変化に敏感だった。
言葉の裏にある微小なトーンの違い。
視線の泳ぎ。
仕草の硬さ。
人の表情や感情の機微を、誰よりもよく見つめてきたからこそ、分かってしまう。
エコーが「慣れた」と口にした、まさにその直前。
ほんの一瞬だけ。
彼の右手に凄まじい力が入り、指先が白くなるほど強く、拳が握り締められていた。
そして「ヒーローだから」と言ったその声も、浮かべた笑顔も、ほんのわずかに震えていたのだ。
(本当に慣れている人は……あんな顔しない……)
ユカリは、夕陽に照らされるエコーの背中を遠くから見つめた。
穏やかで、優しくて、誰よりも大きくて頼もしく見える背中。
けれど。
今のユカリの目には、その背中が、今にも足元から脆く崩れ去ってしまいそうなほど、儚く小さく見えていた。
「ユカリ?」
少し先を行っていた環に振り返って呼ばれ、ユカリはハッと正気に戻る。
「あ……ごめん、すぐ行く!」
慌てて二人の後を追いかける。
事務所の前まで戻ると、エコーはいつものようにスタッフたちと親しげに笑い合っていた。
どこからどう見ても、頼もしいプロヒーローの顔だった。
その完璧な笑顔を見つめながら、ユカリは胸の奥で確信を深めていく。
(この人は……)
(慣れたんじゃない)
(慣れたことにしてるだけ、なんだ……)
昨日から胸に芽生えていた小さな違和感は、もう完全な「確信」へと変わっていた。