第39章 Team Up Mission
呼吸を整える。
そして。
言葉を紡ぐ。
「『美咲。今日帰ったら、一緒に花火……ごめんな』」
その言葉が耳に届いた瞬間。
美咲は両手で口元を押さえ、溢れ出す涙を止められなくなった。
抱えられた女の子も、状況を理解して大声を上げて泣き出す。
「パパぁ……っ!」
「約束……覚えててくれたんだね……っ!」
抱き合って激しく泣き崩れる母と子。
ユカリは離れた場所から、胸を締めつけられる思いでその光景を見つめていた。
目頭が熱くなり、こぼれそうになる涙を拭う。
(ちゃんと……届いたんだ。最後の最後、一番伝えたかった想いが……)
胸を打たれたユカリは、そのままエコーへと視線を向けた。
エコーは泣き崩れる親子の前で深く頭を下げ、静かにその場を離れていく。
その表情は、今朝事務所で出会った時となんら変わりない。
どこまでも優しく、暖かな笑顔だった。
――けれど。
親子の視線から完全に外れた、建物の陰に入ったその瞬間だった。
ふっと、彼の顔から笑顔が消えた。
ほんの一瞬のことだった。
エコーは深く、重い息を吐き出し、誰にも気づかれないほど強く拳を握りしめた。
そして次の瞬間には、何事もなかったかのように再びいつもの穏やかな顔に戻り、歩き出したのだ。
その一瞬の「陰」を目撃していたのは――
「………?」
ユカリだけだった。
(今の……)
胸の奥に、ざらりとした違和感が残る。
けれど、その感情の正体までは掴めない。
「ユカリ先輩」
いつの間にか隣に立ち、前を見つめていた轟が呟いた。
「……すごいヒーローですね」
「……うん」
ユカリは頷きながらも、遠ざかっていくエコーの背中から目を離すことができなかった。
(……なんだろう)
(あの一瞬だけ……すごく、寂しそうな顔をしてた……)