第38章 日曜日
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夜風が心地よく頬を撫でる帰り道。
「1年寮まで送る」と言って聞かないユカリに、爆豪は「要らねぇ」と一蹴したものの、結局突っぱねきれずに二人並んで歩いていた。
街灯のオレンジ色の光が、静かな夜道を照らしている。
「今日はありがとう、爆豪くん」
隣のユカリが、心底幸せそうに微笑んだ。
その笑顔があまりにも眩しくて、爆豪は直視できずに「……フン」と短く鼻を鳴らすのが精一杯だった。
本当は胸の奥がぎゅっと跳ねていたけれど、それを悟られるわけにはいかない。
「……実はね、さっきチームアップミッションの連絡が来てたの。明日から数日間、現場に行かなきゃならなくて」
ご飯を食べ終えたあと、スマホに届いていた通知をユカリは思い出していた。
「そうかよ」
爆豪は短く返す。
プロヒーローのもとでの実践派遣——ヒーロー科の生徒であれば日常茶飯事のことだ。
「だから、格闘訓練は帰ってきてからでいい?」
「当たり前だろ」
『俺に叩き込め』と交わした約束。
それが数日遅れたところで、爆豪の覚悟が揺らぐわけもない。
ただ——
ひとつだけ、どうしても気にかかることがあった。
「……で。今回は誰と行くんだよ」
チームアップミッションは、基本的に複数人のチームで編成される。
学年や校区の垣根を越え、ヒーローを目指す者たちが現場の経験を積むための大切な実践訓練だ。
爆豪の問いに、ユカリはほんの少しだけ言いづらそうに間を置いた。
「私と、環と……」
「おう」
あの天喰なら問題ない。
だが。
「………轟くん」
ぴたり、と爆豪の足が止まった。
夜の静寂が、二人の間に重く立ちこめる。
轟焦凍。
ユカリに想いを寄せ、彼女の心をずっと揺さぶってきた存在。
(……あいつと、数日間ずっと一緒、だと……?)
胸の奥を鋭い焦燥感が突き刺す。
その数日間で、二人の間に何かが起こってしまうのではないか。
嫌な予感が渦巻くのに、それを止める権利も、引き留める口実も今の自分にはない。
それがたまらなく苦しかった。