第38章 日曜日
「あ、それとあともう一人。新しく教える子がいるんだよね」
ふいに思い出したようにユカリが笑顔で付け加えると、爆豪の手元でピタリと箸が止まった。
「ね、爆豪くん?」
ユカリが隣に座る爆豪の顔を覗き込む。
一瞬、テーブルの上に静寂が訪れた。
ユカリの言葉の意味を理解した瞬間、三年の先輩たちの目が丸くなる。
「ええええっ!?爆豪くん!?」
「え、めちゃくちゃ意外なんだけど!?」
まさかのまさか。
あの自尊心の塊のような爆豪が。
年下とはいえユカリに教えを乞うなど、ミリオたちにとっても想定外の出来事だった。
「………理由は?」
環のその一言。
三人の視線が一斉に突き刺さる。
「チッ……そんなの決まってんだろ」
爆豪は苛立ちを隠しもせず舌打ちを打つと、まっすぐ前を見据えて言い放った。
「もっと強くなりてぇからだ」
迷いのない、力強い声だった。
そこには変なプライドも、甘い感情も、一切混ざっていない。
ただひたすらにトップを見据え、勝利のために必要なものを取りに行こうとする――紛れもない、一人のヒーローとしての姿がそこにあった。
「……そっか」
「うん、かっこいいね」
自分を高めるために貪欲であり続ける後輩の真っ直ぐな答えに、先輩たちの驚きは次第に温かな眼差しへと変わっていく。
だが、そんな空気が爆豪には居心地悪かった。
「……視線がうぜぇんだよクソが!サッサと食え!冷めんぞ!!」
真っ赤になった耳を隠すように怒鳴り散らす爆豪の声を合図に、再び食卓に賑やかな笑い声が弾けた。