第38章 日曜日
ほんの一瞬。
それだけのことなのに、ユカリはどこか新鮮そうに目を瞬かせた。
そして、ふわりと頬を緩める。
「かわいい、爆豪くん」
「――っ!」
喉の奥で息が詰まる。
予想もしなかった言葉に一瞬だけ思考が白く吹き飛び、爆豪はそのまま動きを止めた。
じわじわと顔に熱が集まっていくのが自分でもわかる。
「……チッ、髪が鬱陶しいだけだ」
そう吐き捨てると、爆豪はやりづらそうにバッと顔を背けた。
「照れてる」
間髪入れずにミリオが言う。
「照れてる」
ねじれも続く。
そして少し間を置いて、環まで小さく口を開いた。
「……照れてる」
見事な三段攻撃だった。
「てめェらァ!!」
爆豪の怒声がキッチン中に響き渡る。
「サッサと手ェ洗えや!!飯作んぞ!!」
これ以上弄られてたまるか。
そう言わんばかりに、爆豪は真っ赤になった顔を隠すように叫んだ。
まな板をキッチンカウンターに叩きつけ、むしゃくしゃした動作で玉ねぎの皮を剥き始める。
「え、俺達も手伝っていいの!?」
ミリオがぱっと目を輝かせる。
そんな先輩に目もくれず、爆豪は猛烈な勢いでみじん切りを繰り出し始めた。
「……普段料理する奴ァ誰だ」
「料理か〜!ならユカリと環じゃない?」
「なら天喰はこっちだ。あとの二人はテーブルの準備しとけ」
「………え、俺?」
急に指名された環が、自分を指さしたまま固まる。
まさか自分が調理担当に回されるとは思っていなくて驚いているのだ。