第38章 日曜日
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湊くんと別れ、寮へと続く夕暮れの道。
二人の足音とビニール袋の擦れる音だけが静かに響いていた。
爆豪はさっきから、隣を歩くユカリの顔を一度も直視できていない。
視線はずっと斜め前、アスファルトの自分の影に固定されたままだ。
『特別だよ』
湊に向かって投げかけられたはずのその言葉が、耳の奥で何度も何度も再生される。
(……特別って、なんだよ)
5歳児相手の言葉だ。
適当にあしらっただけかもしれない。
だが、あの時のユカリの目は、声は、間違いなく爆豪自身に向けられていた。
誤魔化すようにポケットの中で握りしめた手には、微かに汗が滲んでいる。
「……爆豪くん?」
ふいに名前を呼ばれ、爆豪の肩が跳ねた。
「顔、赤いよ?大丈夫?」
「……っつ、うるせえ!暑ィだけだ!」
怒鳴り散らしながら、爆豪は歩調を早める。
でも。
本当は。
自分に向けられた『特別』の重みに、胸の奥が熱くてたまらなかった。
***
結局、あまり言葉を交わす余裕もないまま、二人はそのまま寮へとたどり着いた。
寮の重いドアを開けると、リビングにいたミリオとねじれが真っ先に気づいて駆け寄ってきた。
「あ、ユカリと爆豪くんおかえり!」
「二人ともおかえり〜!え、なにそれ!?」
ねじれが二人の手に下げられたスーパーの袋に目を輝かせる。
「実はね、爆豪くんがハンバーグ作ってくれるの」
「えええええ!?」
ユカリは、照れを隠すように早足で先を歩いて行く爆豪の背中を愛おしそうに見つめながら、目を細めて笑った。
「だから、みんなで一緒に食べよう」
「食べる食べる!やったー!!」
ねじれは両手を叩いてぴょんぴょんと跳ね回り、後ろにいた環は「えっ、あの爆豪が料理……!?」と目を丸くして固まっている。
そんな先輩たちの反応を横目に、爆豪は「ハッ、子供かよ」と鼻で笑いながらキッチンへと向かった。
けれど、その声にはいつものような鋭い棘はない。
「爆豪くん……俺、今、猛烈に感動してる……!」
中でも一番オーバーに胸を押さえてプルプルと震えていたのはミリオだった。