第38章 日曜日
――そういえば、以前自分が熱を出して寝込んでいた時。
『……夜、食いたいもんあるか』
『ハンバーグ』
『元気かよ』
『消化悪すぎ、うどんにしろ』
『治ったら作ってやる』
寮に看病に来てくれた爆豪が、不器用な優しさでそう言ってくれていたのだ。
(覚えてて……くれたんだ)
自分のために作ってくれようとしていることが嬉しくて、胸の奥がじんわりと温かくなる。
ユカリは柔らかく微笑みながら、何気なく尋ねた。
「ねえ、それって何人分作るの?」
「あ?」
爆豪は眉をひそめてユカリを見下ろした。
ユカリは何の気なしに聞いているだけだったが、爆豪は彼女のその笑顔を見ただけでピンときていた。
(……どうせあいつらにも食わせてやりてぇんだろ)
何か美味しいものや楽しいことがあれば、すぐに身近な人と分け合いたがる。
ユカリがそういう奴だということは、言われなくてもよく分かっていた。
爆豪は不機嫌そうに鼻を鳴らし、前を向いたまま言い放つ。
「……チッ、四人分だ」
「え……?」
まさかミリオやねじれ、環の分まで見越した答えが返ってくるとは思わず、ユカリはパチパチと目を丸くした。
自分の言いたいことや望みを言わずとも分かってくれて、さらりと叶えてくれる爆豪。
やっぱり、この人は優しい。
愛おしさが込み上げてきたユカリは、そっと言葉を重ねた。
「……私も手伝うから。五人分にしない?」
「は?」
爆豪が足を止め、怪訝そうに振り返る。
「ミリオとねじれと環と私と、爆豪くん。一緒に食べようよ」
「…………」
爆豪は無言になり、気まずそうに、けれどどこか困ったようにユカリを見つめた。
ユカリが「……だめ?」と少しだけ首をかしげて覗き込むと、大きくハァと息を吐き出し、乱暴に頭をかきむしった。
「……わーった。食べりゃいんだろ、食べりゃ」
悪態をつきながらも、そっぽを向いて再び歩き出す。
その耳先がほんのりと赤くなっているのを見逃さず、ユカリは溢れそうになる笑みを噛み殺しながら、彼の隣へと駆け寄った。